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通されたのは一番奥のテーブル。
そこに座っていたのは、
「なんでアンタがここにいるのよ!」
キッと私を睨みつけたシエラ。安定の嫌われぶりにむしろちょっと安心する。
「もう、シエラったら。私がお呼びしたのよ」
そう言ってグレイスは嗜め、
「イザベラ妃にご紹介しますね。私の友人達です」
と先に席についていた3人を示す。
シエラは知っている。そして、グレイスが友人と呼んだ2人が身につけているそれぞれの家紋を見て私は彼女達の正体を知る。
「はじめまして、帝国四家のご令嬢とお近づきになれるなんて、とても光栄ですわ」
「あら、可愛いお姫様じゃない? 私の事は気軽にドロシーって呼んで」
そう言って片手を上げ応じたのは、栗色のストレートの長い髪に勝ち気な狐色の瞳。帝国の"軍事"を統べるリンジー侯爵家の令嬢ドロシー・ニア・リンジー。
「私はアルカだ。アルカと呼んでほしい。グレイスが絶対来てっていうからどんな子かと思っていたけど……ふむ。これは興味深い」
無遠慮というよりもまるでモルモットを愛でる研究者のような視線を寄越して来たのは帝国の"魔術"を担うホープ侯爵家の令嬢アルカ・オッド・ホープ。
淡い水色のふわりと跳ねた髪と藤色の瞳が印象的な綺麗な女性だ。
「もう、お二方!この方は」
グレイスが少し慌てたような困った表情を浮かべたので、私は軽く首をふりグレイスを視線で制した。
二人とも一見友好そうに見えるけれど、初対面、しかも皇帝陛下の側妃に対する態度ではない。
が、それくらいは想定内。シエラの敵意剥き出しの視線ごと流すことにした私は、
「では、私のことはイザベラ、と」
綺麗なカーテシーとともに微笑む。
"知力""財力""武力""魔力"を支配するオゥルディ帝国四家。
これでセルヴィス様の正妃候補が全て揃った事になるわけだ。
ここは、お茶会という名の外交の場。
帝国にクローゼアを売国したら、いずれ本物のイザベラが仕える相手になるかもしれない人達。なら関係は良好である方がいい。
「帝国に嫁いで日の浅い新参者ですが、仲良くして頂けると嬉しいですわ」
さて、公式に出てきた寵妃を前に彼女達はどう出るか?
私は戦略を描きつつテーブルに着いた。
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