囚われの人質

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一旦螺旋階段を下りると、フィルは辺りを見渡してから小さな階段を見つけて駆け寄る。 上を見上げてその先を確認すると、クリスティーナに頷いてから一気に駆け上がった。 辿り着いたのは小さな見張りの塔。 望遠鏡で遠くを見ている兵にフィルが体当たりして、あっという間に縛り上げる。 「これ、もらうよ」 フィルは兵の腰から剣を抜くと、自分の腰に差してまた走り出した。 そこは二つの塔を結ぶ橋。 静かに駆け抜けてもう一つの塔に辿り着くと、またしても遠くを見張っていた兵に不意打ちを食らわせて縛り上げる。 「これ、もらうわね」 今度はクリスティーナが兵の剣を取り上げた。 「さてと。それではいよいよご対面とまいりましょう」 「どうやって?」 「空を飛んでガラスを破り、派手に参上ってところかな」 「はあ?」 あからさまに呆れた声を出すクリスティーナを尻目に、フィルは兵の腰から縄を奪って搭の柱に結び付け、残りを外に投げた。 「じゃ、ちょいと行ってくるよ」 軽くそう言うと、フィルは縄を掴みながら搭の外壁を蹴って下に下りていく。 クリスティーナは身を乗り出してフィルの行方を見守った。 すぐ下のガラス窓からそっと中の様子をうかがったフィルが、クリスティーナを見上げて頷く。 どうやらそこは先程の見張りがいた部屋で、予想通り中に司令官がいるらしい。 クリスティーナは、ひとまず上がって来てとフィルを手招きした。 「なに?」 するすると身軽に搭に戻ってきたフィルが尋ねる。 「一旦落ち着いて機会を待ちましょう。状況も分からないまま二人で乗り込んでも勝算はあまりないわ」 「そうだな。だがそんなに時間はないぞ?俺達が牢屋を抜け出したのがバレたら待ったなしだ。一気に仕掛ける」 「そうね。そこで躊躇すればすぐにまた捕まるでしょうね」 ではどうやって踏み込むか…。 頬に手をやって真剣に考え込むクリスティーナの横で、フィルは搭の上の望遠鏡を熱心に覗き始めた。 「君、視力はいい?」 振り返って尋ねるフィルに、クリスティーナは眉根を寄せる。 「なあに?いきなり」 「いいから答えて。どうせ読書も刺繍もしないんだろ?」 言い当てられて、うっと言葉に詰まる。 「視力がいいならどうしたっていうのよ?」 「ちょっとこれを見て」 場所を譲られてクリスティーナはフィルが手を添えている望遠鏡を覗いた。 「遠くの方に小さく旗がはためいているのが見える?」 「ええ。四枚並んでいるわね」 「色は?」 「えっと…。上から順に白・白・赤・赤」 ご名答、とフィルはニヤリと笑う。 「これがなんなの?」 「味方の合図だ」 「え?」 「行こう。一気に仕掛けるぞ!」 「ちょっと、待ってよ!」 縄に手をかけて再び搭の外壁を伝い始めたフィルに、クリスティーナも慌ててあとに続いた。
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