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ふう…とひと息ついたクリスティーナは、次の瞬間ハッとして扉を振り返る。
「国王陛下と王妃陛下は?!」
「大丈夫だ。ひと足先に連隊長とオーウェン隊長が部隊を引き連れて向かった」
「そうなのね」
それならきっと大丈夫、とフィルの言葉にホッとしたクリスティーナは、思い出したとばかりにフィルを睨んだ。
「フィ…あなたね。王太子様になんて無礼なことをしたか分かってる?」
「何が?」
「何がじゃないわよ!よくもあんな失礼なセリフを…」
「ああ。『自分の身は 自分で守れ 王太子』か?交通安全のポスターの横に書いてあったな」
「そんな訳ないでしょう!」
クリスティーナの剣幕に「おお、怖っ」とフィルが首をすくめる。
「殿下、本当に申し訳ありません。わたくしからお詫びいたしますわ。どうか今回ばかりはお許しを…」
そう言って頭を下げてから、クリスティーナは、ん?と首をひねった。
(殿下とフィルって…。似てる?)
控えめに王太子とフィルを見比べてみると、髪型や醸し出す雰囲気は違えど、顔はよく似ている。
(他人の空似かしら。それにしては…)
そこまで考えた時、バタンと扉が開いてドヤドヤと大勢の人が駆け込んで来た。
「王太子殿下!」「フィル!」「アンジェ様!」
連隊長にオーウェン隊長、そしてロザリーが一斉に口を開く。
「大丈夫。皆、無事だ」
王太子の言葉に一同はホッと胸をなで下ろす。
「ご無事で何よりです。国王陛下、王妃陛下もご無事でいらっしゃいます。直ちに敵の兵の取り調べを開始します」
「ああ、ご苦労」
父である連隊長と王太子のやり取りを聞いていたクリスティーナに、ロザリーが慌てて駆け寄って来た。
「アンジェ様!お身体がびしょ濡れですわ」
「え?ああ。雨が吹き込んできたから」
「このままでは風邪を召されてしまいます。さあ、お部屋へ。すぐにお湯を用意いたします」
「ありがとう」
ロザリーに促され、クリスティーナは王太子に失礼いたしますとお辞儀をしてから部屋をあとにした。
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