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救出
「やあ、おはよう!アンジェ。よく眠れたかい?」
「え、ええ」
朝食の席で、いつもと変わらず笑いかけてくるアンドレアに、クリスティーナは顔を引きつらせる。
「アンドレア、とっとと帰れ。いつまでここにいるつもりだ?」
隣の席でフィルが呆れたように言うと、アンドレアは抗議の目を向ける。
「酷い扱いだな。お前の身代わりを立派に務めてやった恩人だぞ?」
「隙あらばクリスティーナに言い寄ろうとしていたくせに」
「隙がなくとも言い寄ってる」
「は?この…!今すぐ帰れ!」
「それがそうもいかないんだよなあ」
アンドレアは悠々と両手を頭の後ろで組み、椅子に背を預けた。
「どういう意味だ?」
「フィル。俺が諸外国を渡り歩いていたのはなんの為だと思ってる?」
「女をナンパする為」
違うわ!と声を荒げてから、アンドレアはまたゆったりと座り直した。
「各国の情勢を見て回ってたんだよ。戦を仕掛ける気配があるかはもちろん、庶民の生活、国王への信頼、国の政策や経済状況なんかもな。我がコルティア王国は、戦争こそ終結したが、まだまだ国民の暮らしは安定しない。これからやるべき政策について、諸外国を参考にしながら議論していきたいと、直々に国王陛下から仰せつかったんだよ、俺は」
はあ…とフィルが大きくため息をつく。
「そういうことなら仕方ない。だがお前はそっちに専念しろ。いちいちクリスティーナに会いに来るな」
「ちぇ、なんだよそれ。婚約もしてないのに、我が物顔するなよ」
「クリスティーナは俺のものだ」
「へえー、もう男女の契りを交わしたのか?」
「バカ!お前と一緒にするな!」
「やれやれ、相変わらず奥手だな。それならまだ俺にも分がある。フィル、正々堂々と勝負しろ。アンジェの心を掴むのは、果たしてどっちなのかな」
バチバチと睨み合う二人に、クリスティーナは口も挟めずにいた。
(これから私、どうすればいいのかしら。もう王太子様のそばに付いて護衛をする役目も終わったことだし、屋敷に帰されるのよね?きっと)
あとで近衛隊の詰め所に行って、父に聞いてみようとクリスティーナは思った。
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