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男装の令嬢
ガタガタと馬車に揺られながら、ハリスは隣に座る軍服姿のクリスティーナに目をやり深いため息をつく。
ブロンドの髪は短くギュッと後ろで束ね、身体には布を幾重にも巻き、軍服にも詰め物をして男装している。
父親譲りの顔と身長のおかげで、こうして見ると女には見えない。
だが、問題はそんなことではなかった。
(このままではいかん)
ハリスは心の中で考え込む。
国王陛下に報告を済ませれば、すぐさま兵を率いて戦場に戻るつもりだった。
どこかのタイミングでクリスティーナを帰さなければ。
そのことばかりが頭をよぎる。
クリスティーナに剣で負かされ、王宮につき添うことは仕方なく了承した。
娘として連れて行くことは出来ないと言うと、クリスティーナはなんのためらいもなく長いブロンドの髪を剣で短く切り落とし、一つに束ねた。
悲鳴を上げて涙をこぼすリリアンをなだめながら、クリスティーナは見事に男装してみせた。
これなら女だとは思われないだろう。
遠い親戚の男子を、そろそろ入隊させようと連れてきた、と説明すれば疑われまい。
(まずは見学だけ。今日のところはこれで帰りなさい、と頃合いを見て命じよう)
ハリスはそう決めると、必ずクリスティーナを無事に帰すと心に誓った。
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