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『もしもし、お母さん!どうしても車が見つからないの!お願いだから迎えに来て!』
私が恐怖心で声が震える。
『分かったわ。着いたら電話するから』
『うん!お願い!』
もう、何が何だか訳がわからない。
とりあえず役場の建物に戻ろうと、階段室のドアを開けた。
「え?」
あの薄暗い駐車場に戻るはずなのに、そこは階段が続いていた。
「どうして?」
もうまるで迷路の中だった。
出口が見えない迷路に迷い込んでいた。
『もしもしッ!』
私は再び母に電話をかけた。
誰かと繋がっていれば、少しは恐怖が和らぐと思った。
『どうしたのよ。もうそっちに向かってるわよ』
『変なの!体育館から役場に戻りたいのに、来た通りに戻ってるのに役場の建物に戻れないの!』
『やだ、そんなに狭いところで迷子だなんて。役場の職員に聞きなさいよ』
その母の言葉で私はハッとした。
車が無くなってから、役場の職員らしき人に誰とも会っていない。
体育館にも、トレーニングをしていた男の人達だけ。
あの不気味な駐車場でも老人と会っただけで、まともに会話ができる人と会っていなかった。
『や、やだ、どうして、ここには職員が誰もいないの?』
全身に鳥肌が立つ。
なんとも言えない恐怖に体がガタガタ震えてきた。
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