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さっきの老人が、もし私に対して話しかけてなかったら?
姿は見えなかったけど、ガヤガヤと声がする方にかけた声だったら?
さっきのトレーニングルームの人達にも、実は私の姿が見えてなかったら?
おかしい!
絶対、ここはおかしい!
『お母さん!早く来て!私、変な所に迷い込んでる!』
『あともう少しで着くから』
やれやれと面倒臭そうな母の声に私は苛立ってきた。
どうしてこんな目に遭うのか理解が出来ず、頭の中がパニックになっていた。
『お母さん!助けて!』
もう泣きそうだった。
早く私の目の前に母親が現れないかと、そのためには役場に戻らないといけないのに、その場所が分からない。
『大袈裟ねぇ。あ、駐車場に着いたから、もう電話切るわよ』
『待って!お母さん!』
通話の切れた画面を見て私は目を見開いた。
圏外になっている。
「え?だって、私、今までお母さんと普通に話してたのに?」
電話がかかって来て私はびっくりした。
圏外なのになぜ繋がるのかもう意味が分からない。
『もしもし?あんた、駐輪場のすぐ横に停めたって言ってたわよね』
『う、うんッ!』
『あるわよ、あんたの車』
そんなバカなと、私は母の言ってる事が信じられなかった。
だって私が戻った時には、私の車はなかったんだから。
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