サバイバー

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 家に帰ると夫はまだ寝ていた。「ねぇ」と声をかけてみたが起きる様子は無い。いつものことだ。  本当ならこの時間は私が店を開けて営業しているけれども、夫は私よりも遅く出勤するからまだ寝ている時間だ。もう一度「ねぇ」と声をかけると「ん?」と返事をした。  「いま病院に行ってきたの。そしたら蕁麻疹がひどいから仕事を休むように言われたんだけど……」  「え?どれ、あー痒そうだね。んー、でもまだオレもだるいんだよね。インフル後遺症かな」  「……そう」    結局、この日も私が午後から店を開けた。この1週間一人で店を開け営業していた。夫からインフルエンザを貰わないように神経も使った。きっと疲れから蕁麻疹が出たのだ。食べないと気持ちが悪くなるけれど、今日は食事を作る元気もない。    出勤途中にコンビニでフルーツサンドを買った。今日はイチゴが入ったフルーツサンド。口にしたらぽろぽろ泣けてきた。  「おいしいね」と言いながら二人でよく食べた。イチゴが一番好きだったけど、キウイフルーツや桃などいろいろな果物が入っているフルーサンドも売っていたら両方買って二人で分け合って仲良く食べた。今の時期は公園のベンチでフルーツサンドとコーヒーを飲みながら桜を見た。フルーツサンドを一緒に食べるだけでとても幸せだった。あの頃の彼はよく働く人だった。
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