サバイバー

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 私が出勤してから2時間後に夫はやって来た。1週間ぶりだからか、いつもより気合いを入れテキパキと仕事をこなしていた。  「ごめんね。今日は朝から大変だったでしょ。早く店閉めても良いんじゃない?」  営業時間は2時間ほど残っていたがお客さんは途切れていた。  「おぉ、たまには気が利くな」と思ったのも一瞬だった。  「夕飯どうする?今日は作る気力がないからすぐに食べられるもの、買って行きたいんだけど」  「あ、俺はいい。この後、山田さんたちと花見にいくから」  「?」  聞けば私が出勤した後、商店街の山田さんから電話があり「今日桜が満開だから花見をするぞ」と誘われたらしい。花見に行くのは良い。商店街の人たちとのつながりもとても大切だ。けれど今の私には歩いてスーパーに行く気力が残っていない。  「そっか。でも、ご飯作る元気が無いからスーパーまで乗せてってくれないかな?お弁当だけ買って家に降ろしてから行くのはどう?」と言いかけたところで夫の顔は一気に赤くなった。  「行くなって言うのか! 今日の花見は一生に一度の花見なんだぞ!」と口角泡を飛ばす。  ――は?  それを言ったら今日の妊婦生活も一生に一度ですけど……。畳みかけるように夫が続ける。 「だ・か・ら!今日、桜は満開。一生に一度の花見なんだって!」  私を店に残し、そのまま夫は花見へ行ってしまった。
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