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桜に少しずつ緑が混じってきていた。
『お花見』中に無言になる事が増えてその度に仁奈に心配される。自分の中の怪物が喋り出す。このままではいけないと。白雲と木陰と巨人の影と比較しても尚色濃い、後ろ向きの影が背中に這い寄る。青春の悩みと言えばそれまでだが、きっとそう割り切るには何もかも足りない。
「明日のお花見会、参加する?」
「……私は良いかな。桜の見過ぎでもう飽きてきちゃったし。仁奈ちゃんは?」
「優子ちゃんが行かないなら行かないよ」
クラスの親睦を深める為の会は休日に行われて自由参加だったので、常日頃から花見を催している私達は参加しなかった。本当は仁奈の性格に関する誤解を解く為に参加すべきだったが、今は自分の事に精一杯で周りに目が向かなかった。
だからこれから起こる事は、多分私のせいだ。
桜は必ず春に何処かで咲く。
じゃあ私は? 仁奈は?
私達は何処で咲けばいいのか?
誰かに花見をしてもらう為に咲くのか?
答えはすぐにやって来る。
巨人の一歩は、大きいから。
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