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乃梨子のことは、好きではない。あざとい女子系で、なんでも報告するような子。だけど、友達関係を続けているのは、学生から続いている唯一の友達だから。
「だってさ、見てないと見てくれたって?メッセージ送るじゃん」
『えへへ~。それよりさ、今から会えない?』
四月に入り忙しいのは新社会人と学生だろう。バイト暮らしの私は居酒屋やフードサービスの配達暮らしだから関係ない。
あぐらをかいていた足を伸ばし、立ち上がると、スマホを肩と耳に挟みながら通話を続けていく。
「別に、いいけどさ」
洗面台へ行きヘアワックスを髪にベタベタとつけていく。
『わぁ!!嬉しい。カフェで待ち合わせねぇ~待ってるねぇ♪綾世』
嬉しそうな声が聞こえたかと思うと勝手に通話を終了させる乃梨子。学生時代からそうだ。話したいことだけ話して、私の返事を待たずに決めてしまう。
「彼氏でも紹介されるのか」
鏡の中の私は上手くない愛想笑いを浮かべていた。
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