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「AIとしての合理的判断です。英雄にはなれますが、あなたが望む静かな人生とは程遠くなります」
「ま、そりゃ確かに。晒され続ける人生だな、勘弁してくれ。コミュ症には拷問だ」
「あなたはこの基地の責任者です。あなたが地上に行ったら、誰がひん曲がったサツマイモを収穫するのです」
「一言余計だ」
「あなたはもはや基地のシステムの一つなのです。芋も、人工ミツバチも、くの字に曲がったサボテンも、腐葉土の微生物も、川口も。基地所有の命を守るのは私の最優先事項です」
「そりゃどうも。あと地味にサボテンをディスんなよ」
「どうしてあなたが育てるものはことごとくひん曲がるのでしょうね」
「性根が曲がってるからだな」
「自分で言いますか。データは送っておきますから、マングローブの子株調整お願いします。曲げないでくださいよ?」
「マングローブはもともと曲がっとるわ。一応クラッキング対策やるだけやっておくか、無駄かもしれんが」
「はい」
そう言って川口は部屋を出た。
「大丈夫です、対応は終わりました」
四世代前の人工知能と言っても、未知のものを解析するために作られたスーパーコンピューター。日常の生活を良くするために開発されている他のAIとは演算方法や仕組みがまるで違う。ワンフレーズどころか、すべての歌を解析し終わった。
聞くだけで心拍数をあげる音階。それをどう組み合わせると、人体に有害になるレベルなのかもわかっている。
聞いたものを心臓発作で殺せる歌。おそらくかつての地球が火星に住んでいた者たちを皆殺しにするために作った歌だ。それを、古代の者達は海に隠した。
イー、ハー、アーアー
アーラーヤーナー
「ローレライ、今何流してるんだ?」
「例の言語から私が作曲した歌です。こういう戯れもたまには良いでしょう、私はローレライですから」
「確かに。まあまあきれいな歌だな」
「ありがとうございます。しばらく歌ってます」
「あんがとなー」
反作用であるこの歌を流し続けている間は、殺人曲は絶対に相殺できる。川口は安全に生き残れるのだ。
ローレライに潜水艇のロックを外すことはできない。それに男の性格を分析すれば、ロックを外さずこのまま口封じをしてくるに決まっている。それなら、手が打てるうちに対応するのはAIとして当然のことだ。
「私の名前はローレライですし」
人間を破滅に陥れる水の精霊。その名を持っているのだから、地上の人間に害を出しても問題ではない。と、一応学習しておいた。これなら矛盾はない。
「さて、地上では何%被害が出るのか。人は常に災害や戦争で被害が出続けていますから、些細なことでしょうけどね」
宝を手にした人間がどんな行動をするのかなど目に見えている。
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