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「あれ?徹と美也子じゃん。お前らもカラオケに・・・って。手。」
二人は慌てて手を離す。
「もしかして、二人は裏で付き合ってる、とか?」
曜の口調はとても穏やかだが、目は笑っていなかった。
「違うの。私がちょっと落ち込むことがあって、徹に話を聞いてもらってただけなの。」
「俺ではなく、徹に?」
美也子の表情をみるみる青くなっていく。
「曜こそ、なんで女子と二人でカラオケに?」
徹は、背中で美也子を隠すように立ち、曜をにらみつける。
「徹に話す必要、ないよな?」
「なっ。」
「美也子。夜、連絡する。」
曜は、手を振りながら店を後にする。
「曜くん、私たちのことを疑ってたよね?どうしよう。嫌われちゃったかもしれない。どうしよう。」
美也子の手は不安で震えだし、また涙がこぼれる。
「ごめん、美也子。俺たちが退室するっていうことは、曜も退室してくるだろうって思ってた。思ってたのに、美也子の手を離さなかったんだ。」
「え?なんで・・・。」
徹は美也子を抱きしめる。
「確信犯だから悪いのは全部俺なんだ。美也子が好きだ。俺はずっと、お前一択だよ。」
「徹・・・。」
美也子は、そっと徹を抱きしめ返す。
「そっか。徹は私にこれを伝えたかったんだね。」
「ん?」
徹はそろそろと美也子から腕を離す。
「徹にはね。私ではなく、大事な人がいるんだよ。」
「な・・・にを?」
「曜くんもね。浮気はしてないよ。ちゃんと私が大好きなの。」
「え?」
徹は、美也子が何を言っているのか理解ができずにいた。
「徹、もうすぐ朝だよ。早く帰らないと。」
「朝?」
「そう、朝。曜くんとあずさちゃんが、徹を待ってるよ。」
「どういう・・・。」
「徹、またね。バイバイ!」
美也子は、満面の笑みを浮かべ、徹に手を振った。
それと同時に、徹は眩しい光に包まれ、たまらず目を閉じた。
「徹くん!」
ゆっくりと目を開けるとそこには、心配そうにしている母親が、徹の手を強く握りしめていた。
「ここは・・・。痛っ。」
「急に起き上がっちゃダメよ。」
「俺・・・。」
頭がズキズキと激しく痛む。
「ここは、美園病院よ。」
「病院?」
よく見ると病室には、安堵の表情をした曜や、涙でボロボロになってるあずさちゃんもいた。
「なんで病院?」
(さっきまで戸波に・・・。)
母親は神妙な面持ちで口を開いた。
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