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部屋のチャイムが鳴ったのは、電話を切ってから30分後。
ドアを開けたら、外の空気をまとった桐谷に抱きしめられた。
「ごめん!あの日、携帯を会社に忘れて連絡できなくて…残業して遅くなったし、部屋にも行けなくて…」
「…うん」
「急に決まった出張も朝早くて、会社に取りに戻った携帯も…途中で水没させて使えなくなって…」
桐谷はポケットからケータイを出して電源を入れて見せた…けど、確かにウンともスンとも言わない。
「笹井に適当なこと言って花梨ちゃんのケータイ番号を聞いて、それで楓さんに連絡できた」
「…ユカちゃん?」
笹井…ユカちゃん?
ユカちゃんは、どの時点でいたんだ?
「うん。あいつなら同期だから、花梨ちゃんのケータイ知ってると思って」
なんかモヤるけど…すぐに聞けない…。
「…それで出張中、連絡くれなかったんだ?」
「ごめん…!隣に住んでるからいつでも会えると思って油断してた…!」
「…ちょ、桐谷…苦しいよ…」
力任せに抱きしめられて…窒息する…!
「焦った…誰も出ないし、ベランダから無理やり覗き込んだら、家具とか無くなってるし…!」
荷物を運び出してる音、爆睡してて気づかなかったみたいだ。
「あの部屋、引き払うことになって。私もそれを桐谷に伝えたかったんだけど連絡ないし、私からもしずらいから、放っておいちゃった」
桐谷がふと力を緩めて、私の顔をマジマジと見つめた。
「俺…フラれるの…?」
そんな捨てられそうな犬みたいな目で見ないでよ…!
「違うよ…」
桐谷は膝から崩れ落ちるみたいに「よかった…!」と言って、私にすがり付いた。
「じゃあ…急に引き払ったのはなんで?」
「桐谷とルカさんが会ってるの見て、実家に帰った時、隣に住んでるのは辛いなぁって思ったから解約したの。でも付き合うようになったからその必要なくなったんたけど、解約したことずっと忘れてて、その日が来ちゃったというわけ」
「え?…ということはなに?あの部屋には戻らないの?」
「まぁ…そうなる」
桐谷はあー…と言いながら上を向いて、少し考えて言った。
「だったら、俺の部屋に来てよ」
私の髪を撫でながら「一緒に暮らそう」って甘い声で言うけど…。
…男嫌いの私が、男と暮らすって…アリなのか…?
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