エピソード5.気になる

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「…や、やめて…!」 そこで急に、桐谷の手が止まった。 そして慌てて起き上がって、足を床に下ろすと、座ったまま両手で顔を覆う。 「…すいません…!もう少しで我を失うところでした…」 私も起き上がって、服の乱れを直してから桐谷の前に立った。 「ううん。私こそ、軽率だった…。ごめん」 「…怒らないんですか?」 本気で風邪をもらおうとしただけだったけど、男性がこんなシチュエーションでどうなるか、予想できなかったとは言えない。 「キスもセックスもいい記憶に塗り替えるって言ったのに…俺はどうしようもないバカですね」 マスクをした顔が赤くなってるのがわかる。 …そのマスクをそっとはずして、驚く桐谷の顎をちょっと掬って…自分の唇を押し当てた。 2度…3度と…。 「…これで、風邪はもらえたと思う。はじめからこうすればよかったね?」 クスッと笑う私を、桐谷が座ったまま強く抱きしめて「なんでそんなに可愛いんだよ…」と言って力を込めてくるから…。 「参ったか…!」と、笑ってやった。
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