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「…や、やめて…!」
そこで急に、桐谷の手が止まった。
そして慌てて起き上がって、足を床に下ろすと、座ったまま両手で顔を覆う。
「…すいません…!もう少しで我を失うところでした…」
私も起き上がって、服の乱れを直してから桐谷の前に立った。
「ううん。私こそ、軽率だった…。ごめん」
「…怒らないんですか?」
本気で風邪をもらおうとしただけだったけど、男性がこんなシチュエーションでどうなるか、予想できなかったとは言えない。
「キスもセックスもいい記憶に塗り替えるって言ったのに…俺はどうしようもないバカですね」
マスクをした顔が赤くなってるのがわかる。
…そのマスクをそっとはずして、驚く桐谷の顎をちょっと掬って…自分の唇を押し当てた。
2度…3度と…。
「…これで、風邪はもらえたと思う。はじめからこうすればよかったね?」
クスッと笑う私を、桐谷が座ったまま強く抱きしめて「なんでそんなに可愛いんだよ…」と言って力を込めてくるから…。
「参ったか…!」と、笑ってやった。
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