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『親愛なる 森山楓ちゃんへ。
君が人に言えない悩みをかかえていると知って、メッセージさせてもらいました。
近うち…話ができないかな?』
差出人は、畑中海苔の介…とある。
スコーンをあげたとき、早速ジャムを塗り付けて食べて、口元をブルーベリー色に汚していた先輩社員だ。
体調を崩して休んでいるのは知ってるはずなのに、畑中先輩、どうしたんだろう。
それに私が人に言えない悩みを抱えてるって。
…男嫌いのことが漏れたのか?
とりあえず、週末に食事に行く約束をした。
…………
「ごめんねぇ。僕、病んでる最中にメッセージしちゃったみたい。
でも、すぐに返事くれたから、救われたよ」
畑中先輩と行ったのは、いつか桐谷と行ったイタリアンのお店。
大きな樹木のオブジェを囲んで大きな四角いテーブルがあるお店だった。
この四角いテーブルは、少し間を離して他のグループも座れるようになっている。
畑中先輩とはいえ、男性と行って近くなりすぎない距離をとれるこの店が、私にはありがたい場所だった。
私の家の最寄り駅の店…というのが難点だったけど、場所を任せるのは不安だったんだよね。
「…いえ。ところで話というのは?」
そんなに長居するつもりはなく、早めに話を進めたくて本題に入った。
「うん。まずは確認してもいいかな?…森山ちゃんって、男嫌いだって本当?」
…やっぱりそのことか。
いったいどこから漏れた…?と思いつつ、社内で花梨ちゃんと話している時点で、誰かに聞かれる可能性はあるよね。
「…はい。まぁ…どんな男性にも必ず起きる嫌悪感、というわけではなくて、曖昧なんですけど、以前の自分より確かに…男性は苦手です」
私の話を真剣な顔で聞いていた畑中先輩は、そうなんだ…と言いながら、わずかに腰をくねらす…。
前に桐谷と来た時にも座った角を挟んだ席。
畑中先輩の仕草に、無意識に距離を離してしまった。
はぁ…とため息をつくだけで、自分から話そうとしない先輩に、しびれを切らして聞いてみた。
「…それで?先輩の話というのは、私の男嫌いの話と、何か関係があるんですか?」
言い終わったタイミングで、注文したパスタが運ばれてきた。
畑中先輩はカルボナーラ、私はペスカトーレだ。
「うわぁ美味しそう…。まずは温かいうちに食べよう…!」
はぁ…と言いながら、何となくハッキリしない畑中先輩に苛立って、私はあっという間にペスカトーレを食べ終わってやった。
「…おいし…。もう一個頼んじゃおっかな。…すいません!ペペロンチーノを…」と言ってから私を見るから、小さく手を振って、いらない…と伝えた。
「…それで、先輩の話は?悩みでもあるんですか?」
先輩はまた、もじっと…腰をひねった。
「うん…実は、好きな人がいるんだけど…」
げぇぇぇっっ…!
まさかこんなとこで告白を受けるんじゃあるまいな?
男嫌いって言ったじゃん?
なのに告白してくる?
…先を促すのが怖くなった。
もしも好きだとか言われたらどう逃れようかシュミレーションしながら、先輩の次の言葉を待つ。
「…僕の好きなその人は、とっても美しくて、皆の人気者なんだぁ」
…視線を感じてふと先輩の顔を見ると、頬を薔薇色に染めて、口の周りをカルボナーラで汚してる…。
あぁっもうっっ!
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