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ちょっと待てぃ…。
怒鳴りたいのは、こっちなんだけど?
…そう思うのに、桐谷の声を聞いて涙が溢れるって、私はどうなってるんだ?
「うるさい。ばか…」
…涙声なのがバレないように怒ろうとしたのに、無理だった。
「…え?もしかして…泣いてる…?」
「…泣いてない」
言うそばから涙が溢れる。
本当は、ずっと連絡が来なくて怖くて怖くて。
リラックスしてるふりして、カラオケ歌って楽しそうなふりして、すぐに実家に帰らなかったのも、心のどこかで桐谷を待っていたからだった。
「ごめんなさいっ!迎えに行くから、どこにいるか教えて…!」
慌てた声で言うから…泊まってるホテルの名前を教えた。
「すぐ行く…!」
桐谷がそう言ったあと「もしもし…?」と声が変わった。
「…花梨ちゃん?」
「…今から桐谷先輩がそっちに行くみたいですけど…怒っちゃダメですよ?…なんかいろいろあって連絡取れなかったみたいだから」
うんわかった…と言ったのは本音。
桐谷からずっと連絡が来なかったこと、別に怒ってはいなかった。
ただ、仕方ないな…って。
男性への中途半端な恐怖心が残る私に、やっぱり恋人は早すぎた…って思ってたから。
心のどこかで、あの日最後まで桐谷を受け入れられなかったことが、私達の間に亀裂を生むかもしれないって覚悟はしていたから。
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