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「か、母さんっ。僕が昔、助けた子って何て子!?」
「な、なぁに。そんな藪からスティックに…。」
今は、そんな冗談に付き合ってられない。
「昔、僕が助けた女の子だよ!」
あら…何だったかしらと、母は眉間にシワを寄せて、うーん、と唸った。
お願いだ……。
「お、お。」
お?
もう少しで出てきそうと言った感じに唸っている。
「お、おー。」
あっ!思い出した!
「大崎さん!」
えーーーー。
母は一仕事終えた様に額を拭うと満足そうに言った。
「まじか……。ねぇ、本当に大崎さんで間違いないの?お、おさないじゃなかった?」
母は少しムッとすると、「あら、失礼ね。大崎さんで間違い無いわよ。」と、リビングに飾られた【感謝状】が入った額縁を手にとって裏の留め具を外し始めた。
僕はその仕草を黙って見ていると、一枚の手紙が額縁の裏から取り出された。
あれは…。
「手紙よ、アナタが助けた子の親御さんから送られてきたものよ。」
僕は母へ駆け寄り、手紙の差出人のところを探した。
【大崎 賢治】。
その子の父親らしき名前が綴られていた。
………おおさき。
____。
結局手紙の差出人は、長内では無く大崎だった。
これは僕の希望を否定する物的証拠になりえた。
何でだろう。
変に期待してしまったからだろうか。
何で涙が出るんだろう。
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