4、穢れ

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実果は、さっき見た子供の着ていた服が上質のものだと見抜いていた。そして、翔太と同じ腕輪をしているのも見た。イライラするので翔太に訊いてみた。 「あの子供の家、金持ちでしょ?」 「子供?」 「市松人形みたいな子供。」 「ああ、あの子ね。アレでも中3だ。身体が弱いんだって大きくなれないって少し可哀想だろ。」 「私が訊いているのは金持ちかってことよ!」 「うん。多分。父親がでかい会社の会長やってる。うちの氏子。」 「なんか、ムカつく。たまたま金持ちの親の元に生まれただけじゃんか。ぶっとい眉毛のブスのくせに。それに、なんで翔太とお揃いのブレスレットしてるの?」 「コレはお守りだよ。亜衣も穂高もしている。うちの者はみんなしている。」 「私も欲しい!頂戴よ!」 「コレ、結構厳しいんだよ。点検とか。父さんが神主の正装をして祝詞を上げてから点検補修をするんだ。それに、うちの血筋の者だけにしか与えられない。」 「じゃあなんで、あのぶっとい眉毛は持ってるの?あたしはアンタの奥さんになるんでしょ?」 「俺の母親もしてない。結婚は関係ないらしい。」 「面白くないっ!欲しい!せめてオヤジと交渉くらいしなさいよ!」 実果が本当に面白く無かったのは、あの子供の住む世界が違う雰囲気だった。 あのスカした品のいいフリ。見ただけでムカついた。着ていたワンピースの色。シンプルなデザインに生地は光沢のある厚地。何だろう。絹でもペラペラじゃない。分かるのは店では買えない物だ。恐らくオーダー。ブランドのオーダー。間違ってもロゴなんて付いていない。それを普段使いで着ていた。 不公平だと思った。 自分みたいに、貧乏で親がDQNで放置されたり、叩かれたりなんてことは、一度も無いに決まってる。 毎日、美味いもん食って、綺麗な服を着て、のほほんとして生きてきたお嬢様。存在だけでも面白くない。見たくなかった。現実にああいうのが居るって知りたくなかった。 それはフィクションの中にだけにしか居てはいけない。実物を知らなければ気にならない。 でも現実に存在するとなったら、絶望的格差しか感じない。そもそも住む世界が違うのだから。そこに自分は行けない。翔太と結婚しても普通の金持ちにしかなれない。いつも誰か上の世界の奴らに見下される。 こんな不公平知りたくなかった。 お辞儀をされたのもバカにされてるとしか思えない。あの子供は、それも分かってない。分かってないことが、どれほど相手の心を逆撫でするのかさえも。 何にも知らなくていいお嬢様。 死ねばいいのに。
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