5、人たらし

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5、人たらし

なんだか面白い遊びにハマってしまった。 チョロいんだ。周りの奴ら。なんで気が付かなかったんだろう。僕は大人になっただけなのに。 僕は子供の僕と大人の俺を使って周りの奴らを翻弄する。 手持ちのカードをよく見て、そのうちの一枚のカードを相手に差し出す。向こうも返してくる。その返ってきたカードで自分の手持ちのカードを確認する。そして、次のカードを選ぶ。その繰り返し。 相手の反応が笑える。 笑わないでいる自分にも笑える。 男は可愛いもんだ。負けを最初から知っている。僕の頭脳は最強。叶わないのを分かっている。安心しろ。お前らの彼女には手をつけない。そこが俺の美学だ。 俺は顔を少し横に傾けて、イキナリ「死に至る病ってキルケゴールの言葉なんだけど、何のことを言ってるか分かる?」と凡そ皆んなが知らない話題でケムに巻く。哲学はあまり興味がない。実存主義は面白いと思う。でも、敢えて相手が分からない話題を振る。マウントだ。これは、男には結構効く。男はプライドが高い。 田中翔太は、自分は皆んなが望む姿で居ようと思っていた。家族、教師、学校の生徒という他人。それぞれに対して相手が喜ぶような態度を取る。 「発達障害」?んな事あるかよ。それも演技だ。田中翔太の基本形だ。 先ずは教師。 これは、成績がいいだけで、やらかしても刑事罰を受けるようなことでも無い限り、盲目的に俺を信じる。 次、家族。 1番厄介。でも来年から都区内に逃げ出す予定。夏の予備校が楽しみだ。釣り合うレベルの人間と出会える。目標はT大文2だ。落ちる気がしない。どっかで留学する。アメリカでMBAを取得する。取れない気がしない。今だって英語は話せる。話さないだけ。 面白いのは学校だ。 特に女が面白い。実果を本妻の位置に座らせて、他の女に少しちょっかいを出す。弁当シスターズの3人は本当に面白い。 3人同士でマウントかけあってる。で、敵の実果にさりげなく攻撃を仕掛ける。実果は最強の「狂器」だ。場合によっては相手の女に蹴り入れてビンタはる。こんな女だって知ってたから、実果を彼女にした。今だけな。すまない。大学に行ったらサヨナラだ。 弁当シスターズも既にいただいた。あまり肩入れされても面倒なので、3回ヤったら終わりだな。後は放流。粘着してきたら実果がヤキを入れる。 実果が案外、独占欲を発揮してきたので「うざいんだよ!テメと別れてもいいんだぞ!」と胸ぐら掴むと大人しくなる。本当に俺が実果を切っても平気だって分かってんだろう。 弁当シスターズが消えたら、また、開拓。 ちょっと声を何度かかければ、勝手に勘違いしてくれる。 ああ……クソみてぇ。 アイシテルノ。 ウン。オレモ、アイシテル。 は?そんなの幾らだって言ってやるよ!それで、股開いてくれるならよ! 安っぽい。何もかもが安っぽい。簡単すぎる。 1回で放流。 アイシテルと言いたがる女はキモい。アイシテルと股開くのがイコールだと思ってやがる。 頭が悪すぎる。実果の方が頭がいい。 大して相手にもしてない女達だから、揉め事にもならない。 実果が他の男と何してようが全然気にならない。病気にだけは気をつけてくれ。それだけだ。俺にうつすな! もっとなんか、落とすのにハードルが高い女はいないのか。 いるいる。「(よう)」がいる。でもな、アレは見た目が頑張っても小学5年生だから、流石に手は出せねぇ。怖い目で睨んでくるオッサンもついてるしな。面倒臭い。 なんかこう……ギラついていない女。「高嶺の花」の雰囲気があって清楚で上品な女はいないのか。 俺、多分そういうのが好き。本当はな。この界隈には居ないだろう。大学で探すしかないのかも。
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