1、変容

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1、変容

僕はクラスの皆んなから「発達障害」と陰口を叩かれている。 皆んな誤解している。そして妬んでいる。僕の頭が良すぎるからだ。僕は、みんなが欲しいものを生まれた時から持っている。 それ以外の僕は普通の17歳の男子だ。男子と男の境目にいるんだ。 みんなと違うところがあるとしたら、僕が「人間の幸せの限界」を知っていることだ。 頭だけが良くて何になる。いい大学に行って、いい仕事について金持ちになる。それは幸せではない。 本当の幸せは、家族を持って仲良く笑いながらご飯を食べることだ。毎日のその時間。 最も原始的なこの人間の営みこそが最高の幸せだ。それ以上は余分なものだ。余分なものが入ると不幸になる。 今年の春。僕のクラスに一人の女の子が転入してきた。都区内から来た子だ。 少し髪が茶色くて背中までの長い髪をした女の子だ。他の女子と同じように少しメイクをしていた。 すごい美人というわけでもない。でも、魅力的なんだ。 初めて彼女を見た時に僕の心は変容した。 僕は、ずっとずっと会いたかった女性(ひと)にやっと会えた………そんな気持ちがした。 その瞬間に僕は変わった。大人しい僕は消えた。女という獲物を食らう男という(けもの)に変わった。 他の雄に盗られる前に僕は彼女を喰らわなければならない。 彼女は決して怒らない。それも変容した僕には分かっていた。 そういうのが分かるようになった。一瞬で変わった。怖くはなかった。本来の僕が目を覚ましただけだ。 その女の名は、安達実果。 俺が今日中に喰ってやる!実果だって悦ぶだろうよ。
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