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森の片隅で生まれた火は、たちまち広がって木々の全てを燃やしてしまいました。動物達には逃げる暇もありませんでした。舌のように伸びてきた炎に絡めとられてしまったのなら、あとは燃やされてしまうだけ。数千年に一度、起きるか起きないかの大火事です。
やがて炎は消えましたが、残されたのは焦土だけでした。激しい炎は、動物達の骨すらも燃やしつくしてしまい、そこに命があった跡すらも消してしまったのです。
その焦土の上を、一羽の鳥が飛んでいました。
「おや、あれは何だろう。全部燃えてしまったと思ったんだけどな」
黒こげの大地に、鳥は真っ白な何かを見つけました。巨大な骨でした。
「ははあ、これは竜か。何百年も生きるっていう竜すらも、燃えてしまえば終わりなんだね。他の動物と違って、骨だけは残ったらしいけど」
その骨の下に、骨とはまた違った白色を見つけて、鳥は驚きます。
「なんてこった、卵も燃えずに残るのか!」
竜の骨は、何かを守ろうとするかのように丸くなっていました。その中央に、卵があったのです。死した大地でも、まるで宝石のように輝く卵が。
「でも、ゆで卵みたいになってるんじゃないかな?」
そう鳥が首を傾げた時でした。あたかも返事をするようにこんこんこん、と。 ――産声が上がりました。卵が割れて、竜の赤ちゃんが孵化したのです。
「お母さん? お父さん?」
生まれたばかりの竜は、まず目の前にいた鳥に尋ねます。鳥は呆れながら、
「私は鳥。お前は竜。私はお前の親じゃないよ。多分そこの骨が、お前の父親か母親、どちらかなんじゃないか?」
言われて竜は、きょとんとして竜の大きな骨を見つめます。
「そんな! 僕は一人ぼっちってこと? どうしたらいいの!」
竜はわあわあと泣き出してしまいました。
どんなに泣き声を響かせても、そこはもう全てが燃えてしまった大地。誰かが来てくれることはなく、鳥も困ったように竜の赤ちゃんを見つめることしかできませんでした。
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