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「うんっ食べたいっ」ととと、と足音を立てて、わんこのように、永守くんについていく我が子。……あれ、なんか、あたしといるときと違うな……。「ぼく、お兄ちゃんと一緒に食べたいっ」
一緒に台所へと向かうその姿を見てふと……涙が湧いてきた。いかんいかん。お母さんは気を抜いている場合ではない、のに……。
安心したら涙が……。
一矢。年下の従兄弟と会わせるとお兄ちゃんって頼られて嬉しそうにしているし……うちは一人っ子だから、本当は、兄や弟が欲しかったのかな……。
でもね、一矢。お母さん、子どもはひとり生むのが精いっぱいでとても……二人目なんて……。
膝を抱えて泣いているとふと、背後にあたたかさを感じた。
「……お母さん、大丈夫? ぼくが守ってあげるから……大丈夫だよ……次、父さんがなんかやらかしたら金タマちょんぎってやるからっ」
ふふふと笑った。これでは、どちらが親だか分からない。
「一矢。ありがとうね……ありがとう……」
そうして息子のぬくもりに包まれていると、胸の中の嵐が次第に落ち着いてきて、凪のようになる。
母親だから。
一番大切なのは、一矢。
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