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世界ははじめ、真っ黒でした。
空も大地も草木も動物も、全てが黒い色で出来ていたのです。
そこで生きるものたちは闇に蠢いていました。
その世界は黒の王様が統べていました。
黒の王様は黒が大好きだったので、その世界に満足していました。
ある時黒い世界の片隅に光が差して、白い色の大地になりました。
白い大地には白い草木が生えて白い生き物たちが産まれました。
その白い世界は、光とともにやってきた白の女王が統べていました。
白の女王は白が大好きだったので、もっと白い世界を広げようとしました。
ある日、黒の王様は自分の世界が少しずつ白い色に変わっていることに気が付きました。
そして白の女王が黒を白へと変えていることを知ったのです。
黒の王様は白の女王に戦いをしかけました。
白の女王も負けじと応戦しました。
二人の実力は拮抗していました。
そして二人が争った跡は灰色に染まっていきました。
そんな世界を遠くから見ていたものたちがいました。
一人は赤い太陽でした。
太陽は灰色の世界が広がっていくのをただ眺めていました。
もう一人は黄色い月でした。
月もまたその戦いを見ていましたが、優しい月はその争いを憂いていました。
月は太陽に相談しました。
どうにかこの黒と白の戦いを終わらせられないかと。
太陽はただ眺めているのに飽きていたので、月の相談に乗ることにしました。
太陽は考え、一つの答えを出しました。
その答えを聞いた月は喜んで、さっそく二人は行動を始めました。
二人はまず青い海を灰色になった場所に作りました。
青い色ができると、灰色の世界は一気に元気になりました。
さらに青い海は世界に雨を降らせました。
雨は太陽と月に照らされて、大地を色づかせていきます。
大地は茶色の土になり、緑の草木が生い茂りました。
そして青い水を飲んで緑の草を食べた生き物たちは、いろんな色の体になりました。
こうして色とりどりの世界が少しずつ広がっていきました。
そうです。太陽の考えとは、世界にたくさんの色を付けることだったのです。
黒の王様と白の女王はお互いに意地になって戦っていましたが、灰色だった世界がいろんな色で鮮やかになっていることに気付いてとても驚きました。
しかし月の願いも空しく、二人はそのカラフルな世界も自分の物にしたいと思い、さらに戦うのでした。
その様子を見て月は悲しみました。
太陽は馬鹿なことを続けているなあと大声で笑いました。
黒の王様と白の女王はいつまでも戦いました。
そのせいで空には白い雲が浮かび続け、生き物たちには影が付くようになりました。
いつまでも終わらない戦いの中、強い雨が降り続けました。
月の涙でした。
そんな月を哀れみ、太陽はずっと慰めました。
すると雨は次第に止んでいき、空には大きな虹がかかりました。
戦いの中で、黒の王様と白の女王は虹を見て、とても美しいと思いました。
お互いに綺麗なものが好きであることを知った黒の王様と白の女王は、もう戦うことを止めることにしました。
それからというもの、この美しい世界を二人は並んでいつまでも眺めているのでした。
終わり
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