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「ぜったいにひみつだよ」
はじめてその声をきいたのは、小学六年生のときだった。
急にきこえたその声に驚いた僕は、サイダーを取りだそうとしていた手をひっこめた。
あたりを見まわしてみるけれど、誰もいない。
人も、動物も、走る車の姿もない。
あるのは、目の前の青い自動販売機だけだ。
気のせい?……、でも、たしかにきこえた。
自動販売機の取りだし口に、もう一度手をさしこんでサイダーを取りだそうとしたとき、
ゴトン――
音がして、取りだし口になにかが落ちてきた。
サイダーがもう一本。僕が買ったのとは別のサイダー。
一本買うとルーレットが回って、当たりに止まるともう一本もらえる、みたいな当たりつき機能がついているわけでもない。
二本のサイダーを手に持って、少し考える。
「もしかして、きみがくれたの?」
たずねてみるけれど、自動販売機はなにも言わない。
でも、きっとそうだ。
「ありがとう」
僕は両手に一本ずつサイダーを持って、自動販売機にお礼を言った。
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