4人が本棚に入れています
本棚に追加
ちいさな町にひとつしかない中学にあがっても、クラスメートのメンバーは小学校のときと変わらず、僕は同じようにおざわくんにいじめられた。
でも、ほかの人たちは部活や勉強でいそがしくなって、僕をいじめなくなった。
父親がやくざだというおざわくんとも、みんな距離をおくようになっていた。
中学三年になると、おざわくんは体育館のうらでタバコを吸うようになった。
「おい、缶コーヒー買ってこいよ。おまえの金で」
あいかわらず僕だけは、おざわくんと関わっていた。気に入らないことがあれば、殴られたりタバコの火を押しつけられたりした。
「僕、ずっとおざわくんにいじめられつづけるのかな」
青い自動販売機にそう話すと、自然に涙がでた。
そのとき……
「ぜったいにひみつだよ」
また、声がした。
ゴトン――
まだサイダーも買ってないのに、取りだし口に落ちてきた。
缶コーヒーだ……
僕はコーヒーが好きじゃないし、今まで自動販売機で買ったこともない。
「もしかして、おざわくんに?」
青い自動販売機は、なにも答えない。
僕は、その缶コーヒーをかばんに入れた。
最初のコメントを投稿しよう!