心臓を君に。

1/5
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 「“絶対に秘密だよ”・・・。」  彼女はそう呟くとそっと目を閉じた。  「うん。この終わり方、好きだな、私。」  少しの間の後、彼女は僕が書いた原稿を返してきた。  「やっぱり君は才能あるよ、書籍で読みたかったなー」  「ありがとうって言っておくけど、次は書き終わってから読んでよね。連載じゃないんだから、それに、書籍化なんて夢のまた夢だよ」  「いつ読めるかわかんないんだからさ、読めるうちに読んどかないとじゃん?」  「そうかもしれないけど、なんか、複雑な気持ちだよ。」  「まあまあ、私はファン第一号なんだからさ!」  「もしかして元気?」  「まあね~ようやく最後まで読めたし!それに君の前なら元気に振る舞うよ、友達なんだから。」  「これまたありがとうって言っておく」  「じゃあ、そんな君に一つ言っておくね。」  「なに?」  「・・・。」  彼女はなにか少し眉を下げて困ったような顔をしている。言葉を選んでいるのだろうか?そんな感じだ。  「一回しか言わないからね?」  「うん。」  彼女の言葉を待っていると彼女はそう前置きした。  「・・・絶対に秘密だよ・・・?」  その時交わした会話が、彼女との最後のやりとりになった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!