突然目の前に美少女が現れたと思ったら、昔離れ離れになった幼なじみだった件

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「はじめまして。N県から転校してきました神宮司清美と言います。よろしくお願いします」 「………」  きぃちゃんが来た。  あろうことか、きぃちゃんが僕のクラスに編入されてきた。 「うおおおおぉぉぉッ!!!!」と盛り上がる男子たち。 「きゃあああぁぁぁッ!!!!」と奇声をあげる女子たち。 「まぢかああぁぁぁッ!!!!!」と(心の中で)叫ぶ僕。 「美少女だ」 「美少女だ」 「美少女だ」 「美少女だ」  まわりから呪文のようにボソボソとつぶやく声が聞こえる。  あまりの美少女っぷりと、うちのクラスに編入された嬉しさとで本音が漏れてるらしい。  それを思うと、久しぶりに再会した時、僕もつぶやいていたのかと不安になってくる。 「一日も早くみなさんと仲良くできたらいいなと思います」  極めて普通のことを言っているのに、美少女が言うと崇高なセリフのように聞こえるのはなぜだろう。  どこかで誰かがポツリと「神の言葉だ」とつぶやいていた。  どうやら一人は壊れてしまったらしい。 「そういうことで、神宮司さんの席は……」  はいっ! はいっ! はいっ! と一斉に手を挙げる男子たち。  わかりやすすぎるな、おい。 「オレの隣がいいと思います」 「僕の隣がいいと思います」 「絶対オレの隣がいいと思います」 「はあ? オレの隣がお似合いだろうが」 「おっと、私も忘れてもらっては困るな」 「僕が一生幸せにします」  まるで隣の席争奪戦のごとく喧嘩が始まった。  っていうか、一人関係ないこと言ってません?  教室中が騒がしくなってきたところで、担任の先生(♀)がバンッ! と教卓を叩いた。 「全員却下だ! 第一席が空いてないだろう! 転校生が来てテンション上がる気持ちはわかるが、少しおとなしくしろ!」  さすがは校内一の女豹と恐れられている先生だ。一発で静かになった。  ある意味、このクラスに編入された理由もわかる気がする。 「古来から、転校生は一番後ろの席と決まっている」  古来からって……。  この先生もちょっと変わってるなあ。  ……。  ん?  一番後ろの席って……。 「神宮司さんは一番後ろ、染谷さんの隣に座りなさい」 「はい」  うそおおおぉぉぉぉんッ!?!?!?  僕の隣に来たあああぁぁぁぁッッッ!!!!!  確かに隣の席空いてるけどおおぉぉぉぉ!!!  ヤバい、普通に考えたら僕の隣だったわ。  きぃちゃんは新品の教科書やカバンを持ちながら僕のそばに近づいてきて頭を下げた。 「はじめまして。これからよろしく……あれ?」 「ど、どうも……」 「た、た、た、たくみくんッ!?」  瞬間、教室の温度が10度くらい下がった。……気がした。
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