桜の下で、もう一度約束を

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 受験が終わっても、先輩からは連絡がこなかった。そして合格発表の日、先輩は全てのSNSを削除した。  それから、私は一度も先輩と会えていない。  風の噂で、合格確実と言われていた先輩が受験に失敗したことを聞いた。 「だからって、なんで……」  受験に落ちて悲しいのも、悔しいのも分かる。他人と話したくなくなるのも分かる。  だけど、先輩にとって自分はその程度の存在だったのかと思うと、未だに泣きたくなるのだ。  先輩はイケメンじゃないし、好みの顔でもなかったし、いつもおどおどしていて、自信がなさそうで、見ているとイライラすることもあった。  私が落ち込んでいても、気の利いた言葉なんてかけてくれない。前髪を切ったって、全然気づいてくれない。  でも、私の気持ちが沈んでいる時は、何も言わずに傍にいてくれた。いつもちゃんと頷きながら私の話を聞いてくれた。私が話したことは、どんなに些細なことでも覚えていてくれた。  廊下ですれ違うと、私が一人の時は手を振ってくれた。私が誰かといる時は、寂しそうな顔でこっちを見ていたから、私から手を振ってあげた。  きっと私は、今まで好きになった誰のことよりも、先輩のことが好きだった。  そして、先輩が受けた大学を受験するくらいには、まだ先輩のことを忘れられずにいる。  もう一年以上会えていない。どんどん記憶は薄らいでいっている。それなのにまだ、私は思い出してしまう。  先輩の優しい声を、情けない微笑みを、私を見る甘い瞳を。 「先輩の嘘つき」  こんな風に綺麗に桜が咲き続けるのなら、私はきっと、先輩のことをずっと忘れられない。
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