桜の下で、もう一度約束を

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「よし」  鏡に映った自分を見て、私は頷いた。  ナチュラル風に見えるけれど、カバー力の強いリキッドファンデーションを使っているし、睫毛は根本からちゃんと上げて、束になるようにピンセットまで使った。  瞼にのせるのは淡い桜色と、透明なラメ。唇だけ赤いのは、一年前の私とは違うことを伝えたいから。  デパートで買ったばかりのワンピースに着替え、200度に設定したストレートアイロンで髪を整える。前髪をしっかりスプレーでかためて、仕上げに少しだけ匂いのついたヘアミストをかけた。  小さい鞄に無理やり荷物を詰めて、予定より30分も早いのに部屋を出る。そして、履き慣れないヒールで家を出た。
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