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 手紙には差出人欄(さしだしにんらん)に「4月1日」と添えられていた。  個展の最中に、偶然だが年度が変わっていた。  そして「エイプリルフール」だった。  意図的に選んだのだとしたら、未来への希望を語り、来世からの手紙を書くことが彼にとってのウソだったのだろうか。  あまりにも剛直で、短い輝きが消える瞬間をウソだと言いたかったのだろうか。  来世で彼は、夢を実現するという意味だろうか。  短い手紙には、何も記されなかった。  その日から、北迫は日曜画家としてさらに精力的に活動し始めた。  目的などいらない。  ウソでもいい。  勝川の強さの半分でも、欲しいと願ったのだった。 了 この物語はフィクションです
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