満月の夜、桜の下で

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「恋が実るらしいよ」  私はナナにその日に告白するように提案した。  補足のNGワードはわざと伝えなかった。  日常的に使いそうな言葉だったので、一か八かだった。    悪い企みが失敗して二人が付き合い始めたら、その時は腹を括って祝福しよう。  成功して破局したら、私にもチャンスはあると考えよう。  ところが当日、気になって体育館裏まで見に行くと、ナナの姿はなく、桜の木の下に旗山くんだけが立っていた。 「良かった。本当に来てくれたんだな」  旗山くんは私を見て、嬉しそうに言った。 「君のことがずっと前から好きだったんだ」  状況が理解できない私は、混乱しながらナナはどこ?と問うた。 「君のことを親友である彼女に相談したんだ。そしたら今日ここで待っているように言われた。もし君が現れたら絶対脈があるからって。だから、もし本当に来てくれたら気持ちを伝えようと思っていたんだ」  ナナからあずかったというメッセージカードを渡される。  恐る恐る中を確認すると、少しクセのある綺麗な丸文字でこう綴られていた。 『カレカノ成立おめでとう!ビックリした? 旗山くんに相談されてからずっとカマかけてたんだ。ごめんね。私が旗山くんのこと好きって言ったのは嘘。ねぇ、私にずっと遠慮してたでしょ?そんなのしなくていいのに。 由佳の隣を旗山くんに譲るのはちょっと寂しいけど、でも1番の親友ってポジションはかわらないよね?惚気話とか愚痴とかいっぱい聞かせてよね〜』  あまりのことに私は言葉が出ない。  私の沈黙を別の意味でとらえた彼は、慌てたように付け加えた。 「返事は今すぐじゃなくてもいい。今日はもう遅いから帰ろう」  そして、茫然としたままの私に向かって、唐突に、例の呪いの言葉を口にした。 「じゃあまた明日、」  止める間もない、一瞬の出来事だった。  私が吐いた呪いは、私のもとに帰ってきたのだ。
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