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プロローグ
「替え玉とはいえ、君はうちの試験を受けたんだろう」
「すみません!」
「まあ、こちらは好都合だ……いいか、良く聞け」
彼は椅子に座りまっすぐ私を見つめる。
「事情は理解した……が、君は俺を欺いた。その報いとして俺の会社に勤めてもらおう」
「え? でも」
驚く私に彼は机越しに冷たく尋ねた。
「では、あの家に帰りたいのか?」
「……それは」
「では決まりだな、君は俺の部下ってことだ」
彼は面倒そうに髪をかき上げる。
「最初に言っておくが、俺の部下だと言って勘違いするなよ。仕事上の付き合いだけで、君を異性として見るつもりはないからな」
……勘違いなんて、そんな……
冷酷に言い放った彼は私の任命書を書いている。
……私って、そんな女に見られたのね……
私はキュッとなった胸の思いを、密かに抱きしめていた。
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