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小学校
ある日のこと、小学生の俺は教室の黒板の隅にある名前をじーっと見ていた。日直の名前が書かれているあれだ。
その日の日直は俺と矢代智也の二人。黒板には、
田中
矢代
と、二人の名前が横並びで書かれていた。
出来心で、ほんの出来心で俺はチョークを手にとり、ふたつの名前の上に、そっと相合傘を書いた。
俺はそのとき、矢代のことが好きだと気づきはじめた頃だった。しかし、男子同士で、そんなことは言うのもはばかられるというのもわかっていた。
だからといって自分の気持ちを完全に抑えることもできず、もやもやしていたときだった。黒板に二人で並んでいる自分たちの名前を見ていたら勝手に手が動いていたのだ。
相合傘の下で並んでいる自分と矢代の名前をしばらく眺めていたら、少し気がすんだ。我に返った俺は、ばかなことをしたな、と思い、相合傘を消そうとした。
黒板消しを手に取ったところで、教室の後ろに誰かがいるのに気づき、振り返る。
そこにいたのは、よりによってその矢代だった。
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