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「わぁ......」
受付で”今日は特別お楽しみいただけると思いますよ”と言われていたのだが、今その理由がわかった。
檜の桶のような露天風呂から見える、独り占めの桜。敷地内に一本だけ設けられた桜の木がちょうど満開を迎えていた。
(これぞ、春って感じ!)
予め受付で購入しておいたご当地サイダーをチビチビ飲みながらお花見を堪能する。
(ここでお酒を飲まないのが、健全に一日を過ごすコツ、かな)
弱アルカリ性の肌がトロスベになるお湯は少し熱めで、湯掻き棒を使って少し温度を調節する。天然木の湯掻き棒はまだ新しく、混ぜるたびに檜の香りがあたりに漂った。
散った桜の花びらがふんわりと湯に浮かぶ。
「この時期の特権、だね」
四月だって、悪いことばかりじゃあない。
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