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初対面の人が家にいたら、もっと気まずい空気が流れると思っていたけれど、今のところそんな感じはなかった雲雀。
むしろ、雲雀と百合子しか住んでいなかった家に、初日にもかかわらずすでに馴染んでいる壱臣の凄さを目の当たりにする。
なんだか、今時の高校生は何考えているかわからないというより、柔軟で適応力が高い天才ばかりなのでは?と考えていた。
「とりあえず英介さんが帰国するまでの一年間は、ここを自分の家だと思って過ごしてね。壱臣くん」
「ありがとうございます。……でも、雲雀さんは大丈夫なんですか?」
「え、私?」
「嫌じゃないですか? 義弟とはいえ、他人の俺なんかが家にいて……」
壱臣が申し訳なさそうに尋ねると、百合子もじっと雲雀を見つめて圧をかけてきた。
おそらく、雲雀が最初から大歓迎ではないことを、壱臣は薄々勘づいていたのだろう。
だから心配しているし、正直な気持ちを知りたいと思っている。雲雀の今の胸中を――。
(未成年を不安にさせちゃ、大人としてダメだよなー……)
本日のランチでは同期の実世に色々と愚痴ってしまったけれど、やはり実際に壱臣に会ってみると考え方が全然変わってしまう。
物腰も柔らかく気配りもできる、だけどその正体は高校三年生の男の子。
何より雲雀より七つも年下だというのに、何倍も大人のような落ち着きようと話し方は、文句のつけようがなかった。
煮込んだ肉を溶き卵に絡めて頬張った雲雀は、もぐもぐと口を動かしながら話しはじめる。
「全〜然問題ないです。賢い義弟ができて私も鼻が高い高い……」
「ほ、本当ですか?」
「私のことはぜひ“姉上”って呼んでくれても――」
「あ、それは大丈夫です」
「なんでよ」
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