四月「はじめまして」

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四月「はじめまして」

 咲き誇った桜の花びらが舞う、新年度になったばかりの昼下がり。  会社近くのパスタ専門店でランチ中の水戸(みと)雲雀(ひばり)は、出来立ての明太パスタをくるくるとフォークに巻きつけて、深いため息をついた。  その様子を見て、正面に座る同期の足立(あだち)実世(みよ)が心配そうに声をかける。 「雲雀どうしたの? 今朝から調子悪そうなんだけど」 「うーん。ちょっとね……」  言いながらくっきりとした猫目を伏せて、ベージュブラウンのミディアムヘアが肩を滑る。  そうしている時はモテそうな雰囲気も漂うのに、仕事中はいつも業務のことしか頭になくて今の雲雀にとって恋愛は、いや男は二の次三の次。  しかし、今朝はその仕事モードも感じられないほどに、どこか気合いに欠けていた。 「フレッシュな新入社員の自己紹介中も、ずっと眉間に皺寄せてたし」 「え! 何それコワ!」 「お前がな」  飲料製造販売会社、ナミア・ホールディングスに入社して三年目の雲雀は、働き盛りの二十四歳で、先輩後輩のみならず同期にも恵まれていた。  その証拠に社内で唯一何でも話せる実世に、何か悩みでも?と問われて、雲雀はようやく胸の内を打ち明ける。 「……先月、母親から急に“再婚したい人がいる”って言われたのよ」 「えーいいじゃん。確か雲雀を産んですぐ離婚して、ずっとシングルだったんでしょ?」 「うん。まあお母さんにそういう人がいたっていうのは嬉しいんだけど、問題はそのあとで……」  言いながらもう一度ため息をつくと、雲雀は先月の母との会話を思い出していた。
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