六月「可愛いお嫁さん」

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 そうして壱臣は自身の指を折りながら、雲雀がソファで寝ていたことを注意したり、飲み会から帰宅して介抱したエピソードなどを話す。  ぐうの音も出ない雲雀が歯を食いしばっていると、正面の席では百合子が驚いた表情を浮かべていた。 「はあ……まったく、どっちが高校生かわからないわね。壱臣くん本当にごめんね」 「なによ。私だって一応お仕事は一生懸命やってるんですけど……」 「生活面の話よ。もう二十五歳で、あっという間に三十歳が来るんだからちゃんとしなさいよ?」  言い訳する雲雀に、百合子は母として当然の注意をした。  すると壱臣は首を振って、さらに話を続ける。 「雲雀さんは多分、持ってる力以上に仕事を一生懸命頑張っているだけなんだと思います」 「……い、壱臣くん〜」 「だから家では甘えてるんですよ」 「ちょっと! その言い方腹立つわ!」  顔を真っ赤にして壱臣に抗議する雲雀に、つい壱臣も面白くて笑い声を漏らした。  そして、そんな義弟はなにが言いたかったかというと――。 「もう今のままでいいですから」 「え……」 「これからも注意はしますけど、雲雀さんのお世話、俺は全然苦じゃないんで……」  言いながら微笑みかけてくる壱臣の瞳は、諦めというよりも情のようなものを帯びていて。  一瞬、その優しい雰囲気に絆されそうになった雲雀。  しかしすぐに我に返って、眉根を寄せながら壱臣を睨んだ。 「待て待て、そんなの私が嫌だよ」 「は? なんでですか」 「私が六十歳になっても七十歳になってもお世話すんのか?」 「まあ、雲雀さんが結婚していなかったらそうなりますね」
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