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「そ、それは……雲雀さんの仕事は営業だって言ってたし、無意識に足とか肩とか手揉みしてるの見かけて」
「……あとは?」
「あと⁉︎ あと、形に残らない方がいいとも思ったんですけど、でもやっぱり消費するものよりも残った方が……」
それを見るたびに、自分のことを考えてくれるかもしれないなんて、烏滸がましい気持ちも実は壱臣の中にはあった。
けれどそんなことは言えるはずもなく、口元を押さえながら必死に恥ずかしさを隠す。
だから壱臣にとっては、まるで拷問のような時間だったが、雲雀にはとても重要な時間であり、義弟を知るための意味もあったから。
誠実な返事を聞けて雲雀が納得すると、ニコリと笑って声をかける。
「ねえ早速使っていい? 今日一日中外回りだったから足がだるくて」
「あ……はい」
すでに充電さえれているマッサージクッションをベッドの上に置き、雲雀は両ふくらはぎを乗せた。
そしてスイッチを入れると、クッション内部の四つの揉み玉が熱を持って動き出す。
「すごーいめっちゃきもちい〜! 壱臣くんありがとう!」
「……あの、雲雀さん」
「んー?」
「なんでさっき、あんな質問を……?」
少し冷静さを取り戻した壱臣が、今度は雲雀に尋ねてみた。
すると足をマッサージされたまま、雲雀は今までで一番の穏やかな表情で語りはじめる。
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