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「プレゼントって、その人のことを考えながら選ぶでしょ?」
「……はい」
「だから壱臣くんは、私のことをどんなふうに考えて選んだのか知りたかったの」
「……なるほど」
「てっきりビールとおつまみをプレゼントされるかと思ったし」
「あ、それも考えました」
「ほらやっぱりな!」
そうして笑い合う二人は、今が一番心の距離が縮まった瞬間だと互いに感じていた。
親の再婚がきっかけで、義理の姉弟としてここにいる。
けれど雲雀は、きっと本当の姉弟のように仲は深まったはずだと信じた。
なんだかんだで壱臣は慕ってくれている、本当の姉のように、と――。
「壱臣くんの誕生日も、期待しておいてねー」
「そう言われると怖いです」
「だけど高校生なのにお金使わせちゃってごめんね。色々ありがとう」
「いえ、俺がしたくてしたことなので……」
雲雀が両手を合わせながらお礼を伝えると、壱臣は穏やかに首を横に振る。
だけど、言えるはずのない烏滸がましい気持ちを抱えている壱臣は。
雲雀の素直な視線が、少しだけ苦痛に感じていた。
「……俺からも一つ、聞いていいですか」
「え?」
「“宮原文斗”って男の人は、雲雀さんの何ですか……」
「文斗……??」
突然、壱臣の口から出てきた文斗の名前に疑問を持った雲雀は、マッサージクッションの電源を停止させる。
流れ作業の中でする話ではない気がして、姿勢を正し正直に答えた。
「前にも話したけど、文斗は元カレで今は良き同僚だよ」
「それだけ?」
「え、うん。何かあった?」
「……すみません。スマホ画面に表示されたメッセージが見えてしまって」
申し訳なさそうに話す壱臣は、どんどん声が小さくなる。
ただ、文斗のメッセージ内容を思い出した雲雀は、その疑問を軽快に笑い飛ばした。
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