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「あーそれは全然大丈夫だよ! 別にやましいこと書かれてないし」
「え?」
おそらく文斗的には、そのやましい気持ちを抱いていてのメッセージ送信だったはず。
そう確信していた壱臣は、未だに雲雀がその気持ちに気づいていないんだと知る。
そして、それは壱臣にとって好都合だと思ってしまった。
「じゃあ、雲雀さんは宮原文斗を何とも思ってないんですね?」
「だから言ってんじゃん、ただの同僚だって」
「……わかりました」
「もしや壱臣くんて意外と色恋沙汰好きなの? 恋でもしてるん?」
それとも、そういう年頃なのかな?なんて思いながら、ニヤニヤして目を細める雲雀。
もちろん今の壱臣の複雑な感情にも気づいていないわけだから、平気でそんなことを言ってしまう。
しかし壱臣は、ここではっきり伝えた方が何か変わる予感がして、雲雀の目を見て肯定した。
「そうですね。多分、恋かもしれません」
「え……え、ちょ、お姉さんに詳しく話してごらん?」
「雲雀さんには絶対相談しませんけど」
「はあ⁉︎」
「おやすみなさい」
雲雀の怒り顔には目もくれず、壱臣は一礼して静かに部屋を出ていった。
結局何を話したかったのか、喧嘩を売られただけなのかさえ雲雀はわからず。
再度マッサージクッションを起動させて、足を乗せながら仰向けになった。
「壱臣くんが、恋かぁ〜」
その真実に、何だか幸せな気分を分けてもらった感覚になる雲雀は、自然と笑みをこぼす。
そして学生時代の恋なんて楽しいしかない!なんて持論を思い出しながら、自分の時の記憶も蘇った。
高校三年生、文斗と交際していた一年間。
あの頃は何も深く考えず、ただただ好きな気持ちが突っ走っていた。
そんな甘酸っぱい青春を思い出し、あの頃と同じ年齢の壱臣の恋を、雲雀は密かに応援する。
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