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一方、隣にある自分の部屋に戻った壱臣。
電気もつけず、窓から見える月明かりだけが頼りの中、ドアを閉めるや否や背中を預けてしばらく動けずにいた。
直接的な告白ではないし、むしろ本人は“他の誰か”だと思っている。
それでも、壱臣が恋をしているという真実を知った雲雀が、少しでも――。
(少しでも、俺に興味を持ってくれたら……)
こんな不器用なやり方だけれど、自分ばかりが雲雀関連でヤキモキしていることも自覚していた。
だから、同じように雲雀もヤキモキすればいいのに。という願いも込めて匂わせ発言をしたのは確か。
そして雲雀にその気はなくても、やはり元カレが今後どう動いてくるかも注意したい。
(……って、まだ俺は、確実に雲雀さんを好きになったわけじゃ、ない……)
そう考えながら髪をかき上げる壱臣は、ベッドへと寝転んで天井を見つめた。
壁一枚を挟んで、気になる女性が生活しているという環境は、心身に悪いと身をもって知る。
しかも全く勝算がなくて、家では怠け者だけれど一応社会に出ている大人の女性であり、父の再婚相手の一人娘。
簡単にはこの関係を進展させられないし崩せない。
ただし、壱臣の中にも貫きたい想いはあって――。
(……後戻りできないほど好きになったら……我慢していた分、止められないだろうな……)
先に出会って結婚を決めたのは親たちだけれど、それによって出会った子供たちの恋愛はまた別。
そんな言い訳もしっかり用意していた壱臣は、恋かもわからない胸のざわめきを抱えながら、悶々とする夜を過ごした。
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