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翌日の朝、高校の制服を纏ってダイニングにいた壱臣は、マグカップに残っていたコーヒーを飲み干す。
時刻は七時を過ぎていたけれど、百合子は夜勤だと聞いていたから今も就寝中。
雲雀はそろそろ起きてくる頃だと知っていたが、なんとなく顔を合わせるのを躊躇っていた。
だからいつもより早い時間だけれど、そろそろ出発しようとリビングを出た時。
「わ、おはよう!」
「……おはよう、ございます。早いですね」
寝起き姿ではなくすでにメイクを施し、オフィスカジュアルな服装と鞄を抱えた雲雀がリビングドアの前にいた。
そしてこれから朝食かと思いきや、雲雀は壱臣に初めての提案をする。
「ねえ、駅まで一緒に行かない?」
「は? どうしたんですか急に。朝食は……」
「朝食は会社近くで済ませられるから、いいでしょ?」
「っ……」
言いながら靴を履きはじめる雲雀は、一緒に家を出る気満々な様子。
今更嫌だとは言えない壱臣は、仕方なくローファーを履いて雲雀と駅まで歩くことに同意した。
玄関ドアを開けると、昨夜降っていた雨が嘘のように晴れ渡っている。
梅雨明けにはまだ油断はできないけれど、初めて雲雀と並んで歩く登校時間が晴れていてよかったと壱臣は思った。
それは雲雀も同じだったようで、大きく深呼吸すると笑顔を咲かせて話しかけてくる。
「このまま梅雨明けるといいね〜」
「……そうですね」
「壱臣くんは来週期末試験だっけ? 勉強してる?」
「復習程度には。いつも通りにしていれば上位保てるんで」
「ひぃ〜優秀な高校生は言うこと違うわ」
自分とは真逆の、真面目で成績の良い壱臣に敬遠するような目を向けた雲雀。
そしてその態度も引っかかりを覚え、この際だからと無表情の壱臣に尋ねてみる。
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