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七月「ふざけないでください」
七月に突入し、一気に夏の太陽が地球上の生物に本気を見せてきた。
そんな暑い日が続く中、祝日の海の日を含めた三連休目前の金曜夜。
夕食時間を迎えて三人で食卓を囲っていると、突然壱臣が話しはじめる。
「明後日、高校の友達たちと海に行ってきてもいいですか?」
その言葉に雲雀と百合子は箸を止めて、驚きの表情を浮かべた。
なぜなら、壱臣の口から“友人”という言葉を初めて聞いたから。
しかも、その友人たちと海に行く予定とは、なんともハラハラドキドキの青春の匂いがする。
「全然良いわよ〜楽しそう! 気をつけていってきてね!」
「ありがとうございます」
「そうだ雲雀! あんた車出してあげなさいよ」
「は、はあ?」
急にめんどくさそうな案件を振られて、雲雀は露骨に怪訝な顔をする。
しかし百合子にはちゃんとした考えがあってのことで――。
「お母さんその日友達とランチ予約していて車使わないの」
「いやいや、壱臣くんたちだってすでに電車で海行く計画立ててるでしょ」
「でも駅降りてすぐの浜辺は三連休混んでるわよ。ほら、車で行ける穴場連れてってあげたら?」
「いやだよ、そんな……」
せっかくの三連休、それも一番無気力になれる真ん中の日に外出なんて。
仕事はテキパキこなしても休日は出不精で怠け者の雲雀は、そんな気持ちを抱えてグラスに入る冷えたビールを飲む。
しかし、横から刺さるような視線を感じてチラリと目を向けると、やはり少し期待を膨らませた瞳をする壱臣がこちらを見ていた。
そして少しでも雲雀を外に出したい百合子は、壱臣から情報を聞き出していく。
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