97人が本棚に入れています
本棚に追加
「高校のお友達は何人?」
「三人で、俺を入れて四人になります」
「うちの車コンパクトミニバンだから大丈夫ね! 必要なら三列目も座席作れるし」
「ちょ……お母さん! 勝手に話を進めないでよ」
承諾した覚えのない雲雀が百合子を睨むも、お構いなしに話を進めていく。
ただ、その無茶振りな提案は壱臣にとって少しありがたいものでもあった。
だから、雲雀が良ければそうして欲しいと目で訴えてみる。
「だめ、ですか?」
「……私のせっかくの休みを学生の遊びに使う義理はないっ」
「我が娘ながら冷たいわねー」
言いながら食事を終えた百合子は、空いた食器をシンクに運んでお風呂へと向かっていった。
二人きりになったダイニングで、黙々と食事を進める雲雀。
そして、食事を終えたけれどなかなか席を立たない壱臣は、ぽつりぽつりと質問を投げかける。
「海ですよ?」
「いってらっしゃい」
「水着ですよ?」
「海入るんだ、気をつけて遊んで」
「……女子も一緒です」
「ああ、そうなん…………っえ⁉︎」
やっと興味を持った雲雀が顔を上げると、なぜか不機嫌そうな表情で目を細めてくる壱臣がいた。
不本意ではあったけれど、どうしたら興味を引けるか壱臣なりに考えてあれこれ話した結果。
雲雀が反応を示した情報は、海に行くメンバーが“男子だけではない”ことだった。
「それって、もしやその女子の中に壱臣くんの意中の……」
「っいません」
「えーそうなのー? つまんなーい」
「いません、けど……雲雀さん心配にならないんですか」
「心配? 何を?」
尋ねられてキョトンとする雲雀に、何の効き目もないんだと思い知らされて、壱臣からはため息が出た。
最初のコメントを投稿しよう!