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「これは絶対秘密だよ」
誰にも言ったらダメだからねと、念を押して雫さんはこう続けた。
「ねえ、知ってる?三毛猫ってメスだけなんだよ」
声の調子から雫さんがドヤ顔しているのが想像できる。
恐らく腕組みをして、座っている石﨑を見下ろしているんだろうな。
俺は寝た振りをして盗み聞きをしている存在だから、その可愛らしい顔を見ることは出来ない。
「ああ、知ってる」
落ち着いた声で石﨑は答える。
おい、石﨑!
そこは知ってても知らない振りをするのがマナーってもんだろ!というツッコミを俺は毎度心の中で繰り返している。
そうなのだ。
石﨑は空気を読めないのか、雫さんの機嫌を損ねることになんの抵抗も示さない。
「え、知ってるの?」
声の調子から戸惑っているのが分かる。
眉をハの字にして困惑した顔も可愛いんだろうな。
「でも、稀に遺伝子異常でオスが生まれることがあるらしい」
デリカシーのない石﨑は抑揚のない声で説明する。
「へぇ、そうなの?」
「ああ。ただその可能性は非常に低くて、三万分の一の確率らしい」
「へぇ、そうなんだ」
その後、三毛猫の話を一頻りすると休み時間が終わり、雫さんは自分の教室に帰っていった。
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