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「これは絶対秘密だよ」
誰にも言ったらダメだからねと、念を押して雫さんはこう続けた。
「ねえ、知ってる?私、病に侵されているんだよ」
いつもと変わらない鈴を転がすような声だから、その内容を理解するのに時間がかかった。
雫さんが病気?
普段遠くから盗み見ている感じでは病魔に侵されているようには見えなかった。
俺はあまりの衝撃に、寝た振りしている事を忘れそうになってしまった。
「え、それは知らない」
珍しく、少し上ずった声で石﨑は答える。
付き合いの長い石﨑ですらも知らなかった事実。
「お医者さんからも治せないって言われてるんだっ」
重大な事を冗談でも言うかのように、あっけらかんと言ってのける雫さん。
今までなんでも知っていた石﨑が、知らないと答えたことに得意げになっている節がある。
「おい、そんな事今まで一度も言ってなかったじゃないか!」
石﨑が声を荒げるのも分かる。
そんな大事な事、今まで黙っているなんて……。
美人薄命なんて言葉があるけど、雫さんには当て嵌まって欲しくない。
みんなのアイドルの雫さんがいなくなるなんて嫌だ。
神様がいるというなら、なんて酷い仕打ちをするんだ。
出来ることなら俺が代わってあげたい。
雫さんのためになるなら、俺の様なモブの命などくれてやる!
さあ、どうする石﨑。
俺は寝た振りをしたまま、石﨑がどうするのか待った。
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