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「おい、雫。僕の父さんの知り合いの病院があるから診てもらえ!」
珍しく大きな声で叱責する。
「いいのよ、石﨑君。私、覚悟は出来ているから」
声を落とし、諦めの様子がひしひしと感じられる。
「何言ってるんだ!諦めるのは早い」
そうだ!諦めちゃダメだ!
俺は寝た振りしたままだけど、心の中では必死に説得している。
「ふふふっ、必死になってる石﨑君、初めて見たかも」
「そんな事言ってる場合か!分かった。今から父さんに電話するから病名を言ってみろ」
石﨑がごそごそとカバンから何かを取り出しているようだ。
そうだ。病名が分からなきゃ、治しようがない。
え、言わなきゃダメ?と前置きして、雫さんは病名を告白した。
「私の病名は……、恋の病」
教室中が静寂に包まれた。
もしかして、教室中の奴らが雫さんの病状に聞き耳を立てていた?
それにしても、恋の病だと?
雫さんは恐らく、恥ずかしがっているんだろうな。
し、しかし、それはきっと……。
悔しいけど、石﨑にしか治せないんじゃ……。
「は?……。そ、そんな病気、僕は知らない」
流石の石﨑もあまりのことに狼狽えている。
それでも雫さんはいつもの調子を取り戻し、甘えた声で言うのだった。
「ねえ、誰か。私の病、治療してっ」
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