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「はい。その男は五十代くらいで普通の会社員のようでした。一人で一升瓶抱えてちびちび飲んでましたね」
「うん、それで」
「あの公園って裏に山があってその麓に桜の木がたくさんあるのが名物になってるじゃないですか」
「そうだな、この辺で花見と言えばあそこだからな」
「花見でいい場所っていったら花がたくさん見える場所ですよね」
「まあ、一般的にはそうだな。桜の花を観ながら酒を飲むのが目的だからな」
「俺もそう思って花がたくさんある広い場所取って待ってたんですよ」
「まあ、中には部長のように酒が飲めればなんでもいいって人もいるけどな」
「部長はさておき。その男は山側の桜の木が少ない所で場所取ってたんですよ。他にいっぱい場所が空いているにも関わらず」
「ふーん。でも、人混みが嫌いとかバカ騒ぎするグループの近くは嫌とかで、静かに花見を楽しみたいって人もいるからな」
「はい、それは分かるんですよ。でもその男、枯れた桜の木の下で酒を飲んでたんですよ」
「それは、何か理由がありそうだな」
「ですよね。で、俺、気になって今日の朝早起きしてその公園見てきたんですよ。その枯れた桜の木の所に何かあるのかなって」
「は、マジで。お前のそういう行動力のあるところ嫌いじゃないけど……。で、何かあったの?」
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