5話 こもり姫、起きる。

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5話 こもり姫、起きる。

 ……。    ふにゅ。  ……。  ん?  温かい。  柔らかい。  布団? いや、違う。 「え?」  目を覚ました。  俺の手がヒメちゃんのそれに触れている。  というか密着しているというか、抱きしめているというか。  もしかして:犯罪。  俺はゆっくりと抜け出した。  幸いヒメちゃんは寝息を立てて体を小さく揺らしている。 「あ、ミノルくん。さっきのって揉んだよね?」  意識があったらしい。  俺は全力のジャンピング土下座を披露した。  なお、ヒメちゃんに背中を踏まれた。  ……。 目覚めてはいけない。 「コンビニにシャツとパンツ買いに行く」 「ふうむ。私も行きたい。何か奢って」 「え?」 「むむっ」 「分かったよ」 「昨晩はお楽しみだったね」 「何をだよ」 「冗談だけど。ミノルくんがすぐ寝てたから。疲れてたんだね」 「ああ」 「じゃあコンビニへ!」  ヒメちゃんは楽しそうにうきうき気分だ。  コンビニに入ると、焼きプリンを選んでいた。 「どんな部屋がいいか、探してはいたのか」 「ほんの少し」 「空き部屋はどこも多くはないと思うが」 「二階、風呂トイレ別、うるさくない駅の近く」 「あとスーパーが遠くない場所だろ」 「うん。つまり焼きプリン」 「ったく」 自室に戻る。 「シャワー浴びて着替えるから部屋に戻れ」 「私も見られたから。今度はミノルくんの番よ、うふふふふ」  悪そうに笑うヒメちゃん。  俺は諦めて溜息をつく。 「ふ」  だが得意げな顔が癪に障ったので、やっぱり外に追い出した。 「薄情なお兄さん」  外から聞こえたが無視だ。  シャワーを済ませて。  一階に下りて大家さんの部屋へ。 「あら、ミノルくん。ヒメちゃんまだ寝てる?」 「どうでしょう?」 「どうかしらね」 「また昼頃に起きるんですか?」 「ミノルくんに会えて盛り上がってるだろうから、昨日一日はすごく疲れたと思うわ。今日は昨晩の残りで、カットステーキよ?」  朝から重すぎでは、と思う。 「部屋、探せそうかしら?」 「探すしかないので」 「そうよね。あと一年だったのに迷惑かけるわ。ごめんなさいね」 「大家さんが誤ることでは」 「あたし、まだ元気なつもりだったのよ?」 「元気じゃないですか」 「そうね。でもきっと元気なうちにやめなきゃよね。あたしくらいの年になると急にできないことが増えてもおかしくないもの。暗い話してごめんね。さて、食べましょう」  俺は皿に盛られたサイコロステーキをぱくぱく食べる大家さんを見る。  昨日は懐かしいと思っていたが現在部屋を借りて住んでいるのはヒメちゃんだけだ。  それに日程は今更だろう。  もうすぐ社会の一員となるくせに解決方法が浮かばない。  本当にどうしたらいいのか?
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